10. 恋路
校正を経て戻された原稿には、ところどころに訂正メモが書かれていた。
もうこれ以上の誤字脱字や表記の不統一は一つとして存在しないはずだ、という気迫で修正原稿を送ってあったけれど、それでもやはり潜んでいたらしい。
改稿に改稿を重ねて、受賞時の文章量から二万文字ほど増え、ようやくストーリィは固まった。
今井さんから最初に指摘があった主人公のキャラ立ちについては、最後の最後まで苦心したけれど、それも今井さんのダメ出しと必死の修正を経て、なんとか仕上がった。
「……ふう」
すべての指摘箇所を修正した原稿を、メールで今井さんに送った。
これで問題なければ、校了となるはずだ。
「ひと区切りついた感じぃ?」
ハルさんが話しかけてくる。
《喫茶まほろば》はいつもどおり、というとハルさんに怒られるかもしれないが、僕の他には誰もいなかった。
「はい、なんとか」
「おつかれさまぁ。ホットドッグ食べる?」
「あ、えっと……今日あんまり持ち合わせなくて」
「なぁに言ってんのよ、サービスサービスぅ!」
待ってなさぁい、とハルさんは用意してくれる。
細かい修正が続いて気が張って、正直なところお腹が空いていたから、素直にありがたい。
「おいーっす」
かろんかろん、とカウベルの小気味良い音とともに知春が制服姿のままで現れた。
「あァら、トモくんじゃなぁい」
「ちわっス」
知春は僕の右隣りの席に腰かける。
「どーよシュンちゃん?」
「うん、終わったよ」
もうすぐ再校が終わりそうだというのは、知春にメッセージで伝えてあった。
「おー、おつかれ。そしたらいよいよ?」
「そうだね、予定では再来月だったかな」
「いやあ、すげえなマジで。いよいよ書店に並ぶんかぁ」
ばんばん、と知春から背中を叩かれる。
受賞作は、文庫版と電子版が同時発売される予定だ。
今井さんがイラストレーターさんとのやり取りを全部仕切ってくれていて、表紙イラストのラフ案もすでにこの目で見ていた。
言ってしまえば僕の中だけの妄想で生まれた物語にはっきりと形が与えられて、キャラたちに本当に命が宿ったような感動を覚える。
実際に商業出版の過程を経験してみて、いろんな人の力がないと書籍の刊行って成り立たないんだなということが骨身に沁みた。
「おっしゃ、打ち上げしようぜ!」
知春が意気揚々と声を上げる。
「あァら、なになに、楽しそうじゃなぁい」
ハルさんがホットドッグを乗せた皿を持ってきてくれる。
知春の前にはアイスコーヒーのグラスが置かれた。
「リカとマリアちゃんも呼んでさ、パーっとやるべ!」
「打ち上げ……何やるの?」
僕が訊くと、知春はニヤッと笑った。
「んなもん決まってるっしょ、『ぱーてぃー』っしょ!」
いつもどおりの知春だった。
「あら、パーティするならうちの店使ってもいいわよぉ?」
「おっ、ハルさんさすが! んじゃ、ちょっとリカに訊いてみるわ」
知春はスマートフォンを取り出して何やらメッセージを打ち始めた。
まだちゃんと刊行に至っていないのに少し気が早いかな、と思いつつ、僕のために動いてくれるのは純粋に嬉しい。
……ん?
「待ってトモ、あの二人、僕が小説を書いてることは知らないんだよね?」
「——あ。そうだったわ。どうすっかな……まだ言わないほうがいい、よな?」
「うーん……だね、できればまだ伏せておいてもらえると」
「オッケ、そしたらさ、普通に遊ぼうぜくらいのテンションで誘ってみっか」
「うん。ハルさんも、せっかくだけど」
「いいのよぉ、気にしなくて。ところで旬ちゃん、真莉愛ちゃんとはどうなのぉ?」
「えっと、どうって……」
ハルさんがカウンターの向こう側から身を乗り出して耳打ちしてくる。
「もうチューしちゃった感じィ?」
「チっ!?」
思わず立ち上がる。
スマートフォンを操作していた知春が驚いた様子で「どうしたどうした」と言った。
「いや、大丈夫、何も」
「んもぅ、その感じだとまだなーんにも進展してないんじゃなぁい? ホント、旬ちゃんはオクテなんだからぁ!」
「おっ、なになに、もしかしてマリアちゃんとのこと?」
興味津々といった顔で知春が反応する。
「あれだべ、こないだ公園デートしてたんだろ? 二人きりで寄り添ってさ」
「ええっ!? 待って待って、なんでトモがそんなこと知ってんの」
「別に俺だけじゃなくて、みんな知ってるっぽいよ?」
「嘘でしょ……」
「んなもん、俺がシュンちゃんに嘘ついてどーすんのよ。で? どうなん?」
二つのニヤけ顔が僕をまじまじと見てくる。
「……なんにもないよ、本当に」
「マジで? なんにも? 手ぇつないだりとかも?」
「ちょっと待って、そもそもだけど、僕と彼女はそういう仲じゃないっていうか——」
「でも、好きなんでしょう?」
ハルさんのストレートな言葉。
返答に詰まる。
「じれったいわねぇ! そんなのもう、ガッとつかまえてグッと抱きしめてブチューっとすればいいのよ! ガッとしてグッとしてチューよ!」
「ちょっとハルさん、パッションが過ぎますって」
「パッションは大事って何度も言ってるでしょう!? ねえ、トモくん!」
「そうだぜシュンちゃん、こればっかりは俺もさんせーだわ。つーか、もったいなさすぎんだろ」
「なに、もったいないって」
「こないだも話したけどさぁ、マリアちゃんって隠れファンが多いって言ったべ? これまで何人も告白しては撃沈させられた高嶺の花が、いつの間にか陰キャ大先生とどっぷり仲良しになってるわけよ。二人っきりで公園デートするくらいなんだから、どう考えても向こうもシュンちゃんのこと好きだろってことよ」
「それは……どうなんだろ……」
「たぶん小説の話とかでウマが合うから、くらいにシュンちゃんは思ってるんだろうけどさ、もうちょいポジティブに考えてもいいんじゃねーの? あんまし言ってもプレッシャーになっちまうかもだけど」
僕の気持ち、真莉愛の気持ち。
本当のところはどうなんだろう。
好きとかどうとか以前に、これまで女子とまともに話したことなんてほとんどなかったから、実際のところはよくわからない。
それに、僕は真莉愛に話していないことがある——もちろん、白金式部という存在。
彼女は、もう一人の僕、白金式部の大ファンだと話している。
僕が書いた小説の細かいエピソードやその裏にある意図まですべて理解しているから、彼女が白金式部というWeb小説家を推してくれていることに嘘偽りがないのは明白だ。
でもそれは、イコール僕こと御手洗旬を好きだというわけではない気もしている。
知春は、真莉愛が白金式部の大ファンだということを知らないだろうし、里香は僕が白金式部だということを知らないはず。
僕を取り巻くいろんな関係が複雑で、いつ壊れてしまうともわからない危うい状況が、僕をヒリつく感覚にさせる。
カウンターの上で、知春のスマートフォンがブブッと振動した。
「あ、リカから返事きたわ」
知春が操作すると、
「映画観に行きたいんだと。真莉愛ちゃんもそう言ってるって」
「いいんじゃなぁい? シュンちゃんの性格的にも、ちょっとずつ距離を縮めるのもいいかもねぇん」
……さっきのパッションはなんだったんだ。
でも、ハルさんなりに僕のことを気遣ってくれているのが伝わる。
「そんじゃまあ、今度の休みに四人で映画でも行こーぜ」
「そうだね、それなら」
「あらぁ、ダブルデートみたいな感じかしらァん? トモくんとそのリカってコはどんな感じなのォ?」
「リカぁ? いや、あいつはホント生意気なやつで——」
「はっはァん」
ハルさんが声を上げる。
「さてはトモくん、リカちゃんとイイ感じなんでしょおん!?」
「うええっ!? いやいやハルさん、そんなわけないじゃん! あんなやつと!」
「なぁんだ、そうならそうと早く言えばイイのにぃ! トモくんも恥ずかしがり屋さんねぇ」
「ちげーって!」
なんとなく置いてけぼりな気分だが、状況から察する。
「トモって、いつから里香と付き合ってたの?」
「シュンちゃんまで! ちげぇんだって、俺はリカと付き合ってなんか——」
再び知春のスマートフォンが振動する。
とっさに僕は手に取った。
「ちょっ、シュンちゃん!」
画面に里香からのメッセージの通知が表示されている。
『ていうかトモ、今度のデートどこ行くー? たまにはフインキあるとこがいいなー♡』
僕とハルさんは顔を見合わせる。
知春はカウンターに突っ伏している。
「トモ……」
「トモくん……」
頭を上げて、観念したような顔で知春は、
「……ごめんなさい…………」
と低い声を絞り出した。
「あぁら、別に謝ることなんて何もないじゃないのぉ。これでホントにダブルデートってわけね!」
「ぐぅ……すまねえシュンちゃん、黙ってて……」
「ううん、全然。元々仲良さげだったから不思議じゃないし、むしろなんか嬉しいよ」
「ありがとよ……」
胸のあたりがぽかぽかとしてきた。
きっと、誰にも話さないほうがいいのだろう。
「景気づけにコレ食べなさいよ! 試作品よォん」
ハルさんは、フルーツたっぷりのケーキを半分にしたものを僕と知春の前に置いてくれる。
「あざます!」
知春はさっそくケーキにフォークを突き刺す。
僕も一口。
「……甘」
僕は思わず言葉を漏らす。
甘いのはケーキだけじゃないみたいだった。
もうこれ以上の誤字脱字や表記の不統一は一つとして存在しないはずだ、という気迫で修正原稿を送ってあったけれど、それでもやはり潜んでいたらしい。
改稿に改稿を重ねて、受賞時の文章量から二万文字ほど増え、ようやくストーリィは固まった。
今井さんから最初に指摘があった主人公のキャラ立ちについては、最後の最後まで苦心したけれど、それも今井さんのダメ出しと必死の修正を経て、なんとか仕上がった。
「……ふう」
すべての指摘箇所を修正した原稿を、メールで今井さんに送った。
これで問題なければ、校了となるはずだ。
「ひと区切りついた感じぃ?」
ハルさんが話しかけてくる。
《喫茶まほろば》はいつもどおり、というとハルさんに怒られるかもしれないが、僕の他には誰もいなかった。
「はい、なんとか」
「おつかれさまぁ。ホットドッグ食べる?」
「あ、えっと……今日あんまり持ち合わせなくて」
「なぁに言ってんのよ、サービスサービスぅ!」
待ってなさぁい、とハルさんは用意してくれる。
細かい修正が続いて気が張って、正直なところお腹が空いていたから、素直にありがたい。
「おいーっす」
かろんかろん、とカウベルの小気味良い音とともに知春が制服姿のままで現れた。
「あァら、トモくんじゃなぁい」
「ちわっス」
知春は僕の右隣りの席に腰かける。
「どーよシュンちゃん?」
「うん、終わったよ」
もうすぐ再校が終わりそうだというのは、知春にメッセージで伝えてあった。
「おー、おつかれ。そしたらいよいよ?」
「そうだね、予定では再来月だったかな」
「いやあ、すげえなマジで。いよいよ書店に並ぶんかぁ」
ばんばん、と知春から背中を叩かれる。
受賞作は、文庫版と電子版が同時発売される予定だ。
今井さんがイラストレーターさんとのやり取りを全部仕切ってくれていて、表紙イラストのラフ案もすでにこの目で見ていた。
言ってしまえば僕の中だけの妄想で生まれた物語にはっきりと形が与えられて、キャラたちに本当に命が宿ったような感動を覚える。
実際に商業出版の過程を経験してみて、いろんな人の力がないと書籍の刊行って成り立たないんだなということが骨身に沁みた。
「おっしゃ、打ち上げしようぜ!」
知春が意気揚々と声を上げる。
「あァら、なになに、楽しそうじゃなぁい」
ハルさんがホットドッグを乗せた皿を持ってきてくれる。
知春の前にはアイスコーヒーのグラスが置かれた。
「リカとマリアちゃんも呼んでさ、パーっとやるべ!」
「打ち上げ……何やるの?」
僕が訊くと、知春はニヤッと笑った。
「んなもん決まってるっしょ、『ぱーてぃー』っしょ!」
いつもどおりの知春だった。
「あら、パーティするならうちの店使ってもいいわよぉ?」
「おっ、ハルさんさすが! んじゃ、ちょっとリカに訊いてみるわ」
知春はスマートフォンを取り出して何やらメッセージを打ち始めた。
まだちゃんと刊行に至っていないのに少し気が早いかな、と思いつつ、僕のために動いてくれるのは純粋に嬉しい。
……ん?
「待ってトモ、あの二人、僕が小説を書いてることは知らないんだよね?」
「——あ。そうだったわ。どうすっかな……まだ言わないほうがいい、よな?」
「うーん……だね、できればまだ伏せておいてもらえると」
「オッケ、そしたらさ、普通に遊ぼうぜくらいのテンションで誘ってみっか」
「うん。ハルさんも、せっかくだけど」
「いいのよぉ、気にしなくて。ところで旬ちゃん、真莉愛ちゃんとはどうなのぉ?」
「えっと、どうって……」
ハルさんがカウンターの向こう側から身を乗り出して耳打ちしてくる。
「もうチューしちゃった感じィ?」
「チっ!?」
思わず立ち上がる。
スマートフォンを操作していた知春が驚いた様子で「どうしたどうした」と言った。
「いや、大丈夫、何も」
「んもぅ、その感じだとまだなーんにも進展してないんじゃなぁい? ホント、旬ちゃんはオクテなんだからぁ!」
「おっ、なになに、もしかしてマリアちゃんとのこと?」
興味津々といった顔で知春が反応する。
「あれだべ、こないだ公園デートしてたんだろ? 二人きりで寄り添ってさ」
「ええっ!? 待って待って、なんでトモがそんなこと知ってんの」
「別に俺だけじゃなくて、みんな知ってるっぽいよ?」
「嘘でしょ……」
「んなもん、俺がシュンちゃんに嘘ついてどーすんのよ。で? どうなん?」
二つのニヤけ顔が僕をまじまじと見てくる。
「……なんにもないよ、本当に」
「マジで? なんにも? 手ぇつないだりとかも?」
「ちょっと待って、そもそもだけど、僕と彼女はそういう仲じゃないっていうか——」
「でも、好きなんでしょう?」
ハルさんのストレートな言葉。
返答に詰まる。
「じれったいわねぇ! そんなのもう、ガッとつかまえてグッと抱きしめてブチューっとすればいいのよ! ガッとしてグッとしてチューよ!」
「ちょっとハルさん、パッションが過ぎますって」
「パッションは大事って何度も言ってるでしょう!? ねえ、トモくん!」
「そうだぜシュンちゃん、こればっかりは俺もさんせーだわ。つーか、もったいなさすぎんだろ」
「なに、もったいないって」
「こないだも話したけどさぁ、マリアちゃんって隠れファンが多いって言ったべ? これまで何人も告白しては撃沈させられた高嶺の花が、いつの間にか陰キャ大先生とどっぷり仲良しになってるわけよ。二人っきりで公園デートするくらいなんだから、どう考えても向こうもシュンちゃんのこと好きだろってことよ」
「それは……どうなんだろ……」
「たぶん小説の話とかでウマが合うから、くらいにシュンちゃんは思ってるんだろうけどさ、もうちょいポジティブに考えてもいいんじゃねーの? あんまし言ってもプレッシャーになっちまうかもだけど」
僕の気持ち、真莉愛の気持ち。
本当のところはどうなんだろう。
好きとかどうとか以前に、これまで女子とまともに話したことなんてほとんどなかったから、実際のところはよくわからない。
それに、僕は真莉愛に話していないことがある——もちろん、白金式部という存在。
彼女は、もう一人の僕、白金式部の大ファンだと話している。
僕が書いた小説の細かいエピソードやその裏にある意図まですべて理解しているから、彼女が白金式部というWeb小説家を推してくれていることに嘘偽りがないのは明白だ。
でもそれは、イコール僕こと御手洗旬を好きだというわけではない気もしている。
知春は、真莉愛が白金式部の大ファンだということを知らないだろうし、里香は僕が白金式部だということを知らないはず。
僕を取り巻くいろんな関係が複雑で、いつ壊れてしまうともわからない危うい状況が、僕をヒリつく感覚にさせる。
カウンターの上で、知春のスマートフォンがブブッと振動した。
「あ、リカから返事きたわ」
知春が操作すると、
「映画観に行きたいんだと。真莉愛ちゃんもそう言ってるって」
「いいんじゃなぁい? シュンちゃんの性格的にも、ちょっとずつ距離を縮めるのもいいかもねぇん」
……さっきのパッションはなんだったんだ。
でも、ハルさんなりに僕のことを気遣ってくれているのが伝わる。
「そんじゃまあ、今度の休みに四人で映画でも行こーぜ」
「そうだね、それなら」
「あらぁ、ダブルデートみたいな感じかしらァん? トモくんとそのリカってコはどんな感じなのォ?」
「リカぁ? いや、あいつはホント生意気なやつで——」
「はっはァん」
ハルさんが声を上げる。
「さてはトモくん、リカちゃんとイイ感じなんでしょおん!?」
「うええっ!? いやいやハルさん、そんなわけないじゃん! あんなやつと!」
「なぁんだ、そうならそうと早く言えばイイのにぃ! トモくんも恥ずかしがり屋さんねぇ」
「ちげーって!」
なんとなく置いてけぼりな気分だが、状況から察する。
「トモって、いつから里香と付き合ってたの?」
「シュンちゃんまで! ちげぇんだって、俺はリカと付き合ってなんか——」
再び知春のスマートフォンが振動する。
とっさに僕は手に取った。
「ちょっ、シュンちゃん!」
画面に里香からのメッセージの通知が表示されている。
『ていうかトモ、今度のデートどこ行くー? たまにはフインキあるとこがいいなー♡』
僕とハルさんは顔を見合わせる。
知春はカウンターに突っ伏している。
「トモ……」
「トモくん……」
頭を上げて、観念したような顔で知春は、
「……ごめんなさい…………」
と低い声を絞り出した。
「あぁら、別に謝ることなんて何もないじゃないのぉ。これでホントにダブルデートってわけね!」
「ぐぅ……すまねえシュンちゃん、黙ってて……」
「ううん、全然。元々仲良さげだったから不思議じゃないし、むしろなんか嬉しいよ」
「ありがとよ……」
胸のあたりがぽかぽかとしてきた。
きっと、誰にも話さないほうがいいのだろう。
「景気づけにコレ食べなさいよ! 試作品よォん」
ハルさんは、フルーツたっぷりのケーキを半分にしたものを僕と知春の前に置いてくれる。
「あざます!」
知春はさっそくケーキにフォークを突き刺す。
僕も一口。
「……甘」
僕は思わず言葉を漏らす。
甘いのはケーキだけじゃないみたいだった。
(つづく)
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